「握力」は「死亡リスク・認知症リスク」のバロメーター!?
2020年9月9日に放送された、NHK放送「ためしてガッテン|意外な寿命バロメーター!握力で死亡リスクがわかっちゃう!?」の中で、握力が低い方の死亡リスクが高いことが研究結果で分かり話題となりました。
また、握力が弱い高齢者の認知症になるリスクは2.1倍高いことが、国立長寿医療研究センターや名古屋学芸大学の下方浩史教授のチームの研究により明らかになっています。(握力が26キロ未満の高齢男性や18キロ未満の高齢女性の認知症リスクが2.1倍と高い。)
握力と全身の筋肉量の関係
握力には腕の筋肉のなかにある屈筋群というものが関係しています。一般的に握力は小さい筋肉なので、効果的に鍛えるのは難しいとされています。トレーニングでもメニューそのものがあまりなく、大きな筋肉を鍛えていく過程で自然と鍛えられると考えられています。
握力を鍛えなくても自然と強くなることに疑問をもたれるかもしれませんが、現実に全身の筋肉量に比例して、握力が高くなるという傾向がみられます。
例えば、10kgの荷物を持ち上げる運動を例にあげます。
この荷物を持ち上げるには、握力が少なくとも10kgは無いといけません。つまり、10kgの荷物を掴む「握力」と、掴んだ荷物を持ち上げる「全身の筋力」の働きによって荷物は持ち上がっているのです。
ではもっと重量を大きくして、自身の握力を超える重さを持ち上げようとした場合はどうでしょうか?
私がよく行うデッドリフトというウェイトトレーニングなどでは、100kgを超える重量を扱うことがありますが、パワーグリップなどを使用して握力を超える重量でのトレーニングサポートを行っています。
そして、自分の握力では掴みきれない重量を、全身の筋力で持ち上げ、支えるトレーニングができています。
つまり小さな筋肉である握力より、全身の筋肉ははるかに大きな筋力を持っているのです。
ですが、ここに10kgの荷物も持ち上げることのできない体の方がいたとしたらどうなるでしょうか?
おそらくこの方は、日常的に10kg以上の物を掴んで上げ下げするなどの運動は行わないので、徐々にその握力は退化し、ついには10kg以下になってしまうかもしれません。
こうした循環的な運動のサイクルから、「握力が強い=全身の筋肉が強い」という図式が成り立つとされているのです。
死亡リスクと認知症のカギは活動性
筋力が強い方は成人病になるリスクや、OA(変形性膝関節症)など寝たきりの入り口となる疾患も少ないというエビデンスがあるので、死亡リスクが低いのは当然と言えます。
また、認知症に関しては下のデータが参考になります。
要支援状態になるリスクで最も大きいのが廃用症候群と考えられます(高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患)。
それに対して要介護になる原因は「認知症」が大きな割合を占めています。
このカギとなるのは活動性だと考えられています。筋力が衰えると家に篭もりがちになりますよね?
私の母は70歳で股関節が悪いのですが、週1回の友達との買い物とトレーニング(私が車で送迎)以外は外出しないと言っています。
最近、筋トレ以外にも運動をした方が良いと歩行器を購入しましたが、関節疾患などがあるとどうしても外出が億劫になると言っています。
家に篭ると人と話したりする機会もなくなります。また外を歩くということは様ざまな状況判断をする必要もあるため、知らず知らずのうちに脳を使っています。
さらに関節疾患で外出機会が減ると、日光浴ができないためビタミンDが不足し、より痛みがひどくなるという症例もあるようです。
こうしたことからも、活動性維持のために普段から筋力を強化することが重要となります。
活動性維持にも役立つ握力トレーニング
活動性の維持にも役立つ握力トレーニングの側面をお話しいたします。
握力は、日常生活の質を維持・向上させるために不可欠な要素として捉えることができます。
例えばペットボトルを開ける、お箸を握って食事をするという、生活にとって欠かせない動作の中には手指を使う場面がたくさん存在します。
こうした動作を自力で行えなくなると生活の質が下がり、自然と活動性は低下していってしまいます。
手指の運動をつかさどる神経は脳と直接つながっており、第2の脳と呼ばれるほど神経が発達しています。親指は他の4本の指と向かい合っているので、他の指とともに「持つ」「つかむ」「握る」「ひねる」「結ぶ」「まわす」など、多様な動作をすることができます。
手指が健康に使えることで複雑な運動制御を行い、脳が刺激されていることがわかります。
先ほど、握力は筋トレなどの動作を行えば自然に鍛えられる。握力は全身の筋力の指標になるとお伝えしました。しかし、車いすの方や、すでに虚弱状態にある方などはローイング(ボート漕ぎのようなトレーニング動作)などが難しいため、直接握力を鍛えることで日常生活の動作を改善することも可能なのです。
握力強化にはダンベルなどを用いたデッドリフト(重りを持って上体をおこす動作)が効果的ですが、施設等では準備が大変なことと、見守りが必要なため導入は難しいとおっしゃる施設様が多いのが現状のようです。
ケアエルハーモニーのハンドトレーナー
そういうお悩みの解消にうってつけなのが、ケアエル・ハーモニーのハンドトレーナーです。
卓上においてグリップを力いっぱい握るだけで、機器が握力トレーニング動作をしてくれます。
このハンドトレーナーは、握る手を開こうとする動作を繰り返します。一般的に耐える動作「遠心性筋収縮の負荷」を連続してかけることで、効果的に握力を鍛えることが可能になります。
いかがでしたでしょうか?
握力の強弱は、全身の筋肉の強さや、活動性・日常生活の質などと相関しながら、それぞれのバロメーターのように働いていることを垣間見ていただけたかと思います。
すでに筋力低下に関するお悩みを抱えておられる方には、握力の強化が「日常生活動作の改善」や、「手指を使って複雑な動作を行えることで認知症の予防」にもなりそうです。
施設やご自宅での握力トレーニングに是非ご検討ください。